誰かの支出は誰かの所得


消費者のニーズの代表例として以下があります。
「安い(ディスカウント)」
「高品質な製品・サービス(スペシャリティ)」
「早い・便利(コンビニエンス)」


何度も書きますが、美容のニーズとは「美しくなりたい」「見られ
たい」「若くなりたい」そして「触られたい」であります。

ニーズ(需要)を満たす為にお客は美容室に来店しているわけです。

モノの値段が決まる仕組みはいくつもあるでしょうが、とくに重要
なのが需要と供給の関係であるとは以前も説明しました。

どれだけの需要があってどれだけの供給ができるか。

需要が高くて供給が低ければ、値段は上がります。逆に、需要が低
くて供給が高ければ、値段は下がります。

値段を決めるときに考えるべきは、需要と供給のバランスです。

現在、日本はデフレです。デフレとは「貨幣現象」とやらではなく、
「総需要の不足」のことをいいます。

日本経済としては、実質消費(物価の変動の影響を除いた消費金額
ではなく「量」で見た消費)が下がり、エンゲル係数が上がってい
ます。即ち、所得が減る中で、全体的な消費は減らし、食糧の購入
に回しているわけです。

となるとなるべく、支出は減らします。美容の支出は、真っ先に減
らされるでしょう。

お客獲得の為に、一番頭を使うことなくできることが、“安売り”
になるわけですね。各業界安売りのオンパレードです。

昨年から、運送業の過剰サービスが見直されていきました。配達無
料といったものですね。これ自体は良い事だと思います。

当たり前のことなのですが、割と誰も考えないことを書きますと

誰かの支出は、誰かの所得
誰かの資産は、誰かの負債
誰かの貯蓄(預金・借金返済)は誰の所得にもならない

配達無料ということは、運送業界にお金が落ちないので、運送業界
で働く人の誰も所得にもならないわけですね。

配送料が発生するということは、お金が落ちて(支出)、運送業界
で働く人の所得になります。

また、その所得から別の業界にお金を落としていく。こうやって、
お金が回っていけばいいのですが・・・

美容室全体の軒数は増加傾向にあるにも関わらず、全体の総売上は
下がっています。

例えば、ヘアカラーを普通の美容室で5000円でやったとする。とこ
ろが、デフレなのでお客は支出を減らしたい(消費者のニーズであ
る「安い」)。そして、ヘアカラー専門店で2500円で髪を染める
(美容のニーズの「美しくなりたい」)。

結果、ヘアカラー専門店としては、一人お客ゲットで2500円アップ
ですが、全体でみると、2500円のダウンとなるわけですね。

つまり、美容室に落とすお金が2500円減ったというわけです。

お客側としては、安売り合戦はむしろ大歓迎と言いたいところです。
ところが、激しいコスト削減の挙句、材料も安いものに切り替えら
れてしまい、髪も傷むことになる。

こうやって考えると、安売り合戦は、回り回ってお客にとっては損
なのかもしれません。

この場合、ヘアカラーというあまりにも一般化してしまった(コモ
ディティ化)ものでは、過当競争にならざるを得ないわけです。

だとすると、カット、カラー、パーマとは別に、新しいニーズを見
つける必要があるわけですね。


お勧めです。村上世彰さん「いま君に伝えたいお金の話」

いま君に伝えたいお金の話 (幻冬舎単行本)



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