想像力の問題
美容室を営業で回っていると、美容室のオーナーの口癖で「商品の
説明するとき、お客さんにウソをつきたくないから」というのがあ
ります。このウソというのがポイントでして、何がホントで何がウ
ソかも知らないのによく言うなぁ~っとつくづく思います。
あえて言わせてもらうと、美容師さんに美容メーカーの商品につい
て、ホントとかウソなんてわかるはずもありません。
もちろん、言っている意味はわかります。お客のことを思ってのこ
とだというのは重々承知です。
ホントとかウソとかいうよりも、単純に勉強すればいいだけの話。
そんなに勉強してきていないのに、美容師となって、美容室を出す
と途端に偉くなる人って多いのです。
というのが、美容メーカー、ディーラーの営業マンならば、美容室
のオーナーの事を「先生」と呼びます。
これは、美容業界のオヤクソクみたいなものです。
で、その「先生」の呼び方で、偉くなってしまうのです。
これはウソみたいなホントの話ですから。
元々、理工系(化学、生物等)は全く勉強してきていないはず。
お店に入ってから、多少、専門用語を知るぐらいです。
それなのに、美容の商品について、イチイチ文句をつけてくる。
もちろんですが、「ほんとに知らないから教えてくれ」という方も
いらっしゃいます。
ですが、ほとんど分かったつもりの方が多い。
で、「ウソはつきたくないから」についてですが、結局これは自分
のことしか考えていない発言だと私は思うのです。
ウソを言って、「相手に突っ込まれたくない」とか、逆に、ホント
の説明をすることで、「相手よりも有利に立てる」ぐらいにしか考
えていませんから。
商売というものは、お客の心理を扱うものです。
その心理とは、目には見えないものです。
ですから、想像するしかありません。
何を想像するのか?
これは、「お客が喜んでくれること」です。
何をされたら、お客が喜んでくれるのか。そして、相手をどこまで
も良くしていこうとするかどうかです。
つまりは、自分中心ではなく、どこまでも相手中心。
だから、お客が何を望んでいるのか、ニーズはどこにあるのかと言
うように、相手の気持ちを想像することができるか否かなのです。
営業は、売り上げに対して回収がつきものです。
“金払いが悪い人”は、必ずいます。
私の拙い営業経験からすると、金払いの悪い人は、なにやっても、
どんなに色んなこと教えても治りません。治そうともしません。
なぜ治らないかを考えてみたところ、想像力の問題だと私なりの答
えを出しました。
たとえば、「今回は材料代を全額は払えないので、もうちょっとだ
け待ってもらえませんか?」なら、まあ情状酌量の余地はあると思
います。
しかし、金払いの悪い人は、平気で、「他に支払いがあったので、
そっちに回した、ゴメン」と言ってしまえます。
その発言により、「相手がどう思うかな?」は全く想像できません。
つまり、相手の気持ちを考えきれないのです。
あえて、もうひとつ付け加えるなら、美容室だと「客だから商品を
取ってやっている」というのがあります。
単純に、物凄く威張っているわけです。
お店を運営していくうえで、いろんな必要経費があります。
家賃、光熱費、人件費、材料費等々どれが一つ欠けても、ダメだし、
その一つ一つが最優先項目です。
ところが、金払いの悪い人は、勝手に優先順位をつけてしまって、
材料費は待ってもらえるとか決めつけています。
それはさっきも言いましたが、「客だから許される」だからです。
こういうお店は、まず上手くいかないか、いずれ潰れます。
厳しい状況はどの店舗も同じなわけで、そこをなんとか、周りに迷
惑をかけないように必死でやっているオーナーもいます。
不思議なもので、そういう必死なところには、ついつい応援したく
なるし、依怙贔屓したくなります。
それが人の心というもでしょう!?
商売は、人付き合いが肝心です。相手の気持ちを考えきれないのは、
致命傷です。
相手の立場に立つといっても、私自身は相手ではないので、物理的
にも現実的にも無理です。
無理ならばどうするか?
だから、想像力を磨く必要があり、想像力の問題なのです。
さて、見城徹さんの「読書という荒野」では、読書を通しての想像
力を磨くことの大切さを教えてくれます。
以下に引用します。
本には、人間社会を理解する上ですべてが含まれている。
人間は途方もなく多様な存在で、自分では想像もできないような考
えを持つ他者がいること。
ゆえに、人間同士の争いは決して消滅しないこと。
すべての意思決定は、人間の感情が引き起こしていること。そのた
め、他者への想像力を持つことが、人生や仕事を進める上で決定的
に重要なこと・・・
読書で学べることに比べたら、一人の人間が一生で経験することな
ど高が知れている。
読書をすることは、実生活では経験できない「別の世界」の経験を
し、他者への想像力を磨くことを意味する。
本のページをめくればめくるほど、人間の美しさや醜さ、葛藤や悩
みが見えてくる。
そこには、自分の人生だけでは決して味わえない、豊穣な世界が広
がっている。
そのなかで人は言葉を獲得していくのだ。
(中略)
もちろん、仕事のために必要な情報を本から取得するのは悪いこと
ではない。
しかし、僕が考える読書とは、実生活では経験できない「別の世界」
の経験をし、他者への想像力を磨くことだ。
重要なのは、「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じる
か」なのである。
以上引用。
想像力を磨いていきましょう。
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