技術という在庫
人間は意外と目に見えるものしか信じようとはしません。何を信じ
て何を信じないのか。何が見えて何が見えていないのか。商売は、
ある意味において、目には見えない“人の心”を扱い、その心を読
まなければなりません。
需要と供給
需要とは、人間の「こんなものが欲しい」とか、「こんなモノがあ
れば便利だ」という心の部分から生まれます。
それを形にして提供できること、これが供給。
モノ(目に見えるモノ)として、供給出来るものならば、想像しや
すいのですか、サービスといった目に見えないモノを供給するとな
ると一気に人間は想像出来なくなります。
その最たるものが、「技術」だと私は思うのです。
技術自体は、目には見えません。
技術を使って出来たモノならば目に見えて分かりやすい。
たとえば、車は、あらゆる技術の結晶と言えます。
ところが、技術の最高の結晶である“車”であったとしても、簡単
に売れるものではありません。
もちろん、車の需要は高いですから、供給が成り立つわけです。
ですが、それが成り立つからと言って、必ずしも売れるとは限りま
せん。
当ブログでは散々書いていますが、「どんなに良い商品であったと
しても売れない」のです。
その商品を売るためには、営業をしなければなりません。
モノやサービスを売るためには(買ってもらうには)、営業をしな
ければなりません。
営業マンが相手を説得し、お客に納得してもらって車が売れる。
自動車屋に営業マンがいなかったら車は売れるのでしょうか?
私は売れないと思います。
確かに現在の日本の自動車メーカーの販売の仕組みがあるので、営
業せずとも売れていくかもしれません。
ですが、販売代理店の営業マン一人一人の日々の営業があってこそ
車が売れているのだと思います。
お客を説得し、納得してもらってモノやサービスが売れる。
売れる仕組みを作っていくのも、営業です。
営業なくして会社は語ることはできません。
しかし、殆どの人間が、「良い商品をつくってさえいれば、勝手に
人が集まってきて商品が売れる」と本気で思い込んでしまっている。
とくに、美容業界(美容室)は、それが“顕著”です。
約20年、美容メーカーの営業マンとして美容室と携わってきたから
こそ、顕著であると言い切れます。
何故か?
口で説明するよりも、「技術で結果を出す」という考えだからです。
技術の結果さえ見てくれれば、お客は分かってくれると心底思い込
んでいます。
お客というものは、口で丁寧に説明し、説得して納得してもらって
モノやサービスを買ってくれるのです。
美容師の仕事は、「切って、塗って、巻いて」ではないのです。
これでは、ただの作業です。仕事ではありません。
来店したお客に、どのような技術を提供したのかを、しっかりと説
明できなければ意味がありません。
美容室は「技術を競争する商売ではない」のです。
技術を売ることが仕事なのです。もっと言えば、「販売こそ仕事」
と思いきれるがどうかです。
販売が出来なければ、「技術の在庫オーバー」になるだけ。
技術という商品の過剰在庫にならないようにしなければなりません。
だからこそ、販売に力を入れる事が必要不可欠なのです。
自分の販売する商品(技術)に関する知識が何もないから、何も話
すことが出来ない。話すことと言えば、世間話だけ。
お客はトークに納得しているのであって、技術に納得しているわけ
ではありません。
技術という在庫を常に抱えているという意識のなさ。
商品には賞味期限や消費期限という“期限”がつきもの。
期限が過ぎてしまえば、売れないし、古くなり、腐っていくだけ。
だから、期限内に売ろうと必死になる。
車は確かに食べ物と違って腐ったりはしません。
ですが、時代性やテクノロジーの進歩やデザイン性とといったもの
は、日々刻々と変化している。
時代遅れにならないようにしなければならない。
技術も同じで、在庫のままでは、その技術自体も廃れてしまう。
現在、美容室ではパーマ比率が平均すると10%前後。
10人に1人がパーマをかけるかどうかの世界。
技術は日々やるからこそ、出来るようになる。継続と蓄積が最も大
切なのが技術です。
美容室では、人によっては様々な技術を身につている方もおられま
すが、その技術を販売することができずに、在庫のままになってい
る美容室の多いことといったら・・・
最近、美容室でよく耳にするのが、「店販商品等の在庫を抱えたく
ない」というものがあります。
実際に目に見える商品ならば、在庫がどうのこうの言うくせに、身
に付けたのにも関わらず、日の目を見ない技術という名の在庫には
目がいかないようです。
在庫にも目に見えるものと見えなものがあるのです。
営業、販売、接客で悩んでいるなら、日本で一番モノを売っていた
であろう髙田明さんの「伝えることから始めよう」を読むことをお
勧めします。
西野亮廣さんの「新・魔法のコンパス」では、「集客」と「失客」
について説かれてあるので、お店を運営されている方は、絶対に読
むべき一冊です。
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